御年84歳の“メディアのドン”読売グループ本社の渡邉恒雄会長が、民主・自民の大連立工作で永田町を騒がせたのはつい最近のこと。いまだ影響力を行使し続けるナベツネ氏こと渡辺会長について、ジャーナリストの上杉隆氏が、日本テレビ元政治部長の菱山郁朗氏と対談、ジャーナリストとはどうあるべきかを議論した。
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上杉:渡邉さんにも氏家さん(齋一郎・日本テレビ会長)にも何度か取材していますが、会うとすごくいい人たちですし、彼らの果たしてきた役割も否定しない。 ただ、もう時代が違う。左翼活動時代の手法を使って社内に細胞を作り自由な言論を封じ込めたり、国民の付託を受けない勝手な権力行使で政治に介入するのは、ジャーナリストとはいえません。
菱山:僕は、彼らのことを駒澤大学マス・コミュニケーション研究所の年報で権力至上主義者と書きました。権力にしがみついていないと甘い汁もすえないから、常に権力を取ろうとする。だから民主党が政権をとるとパッと鞍替えして、山里会(渡邉氏が主催する政治家と政治部記者の懇談会)にも旬な民主党の政治家を呼ぶ。要は志や理念より情報が欲しい。
上杉:やはり特殊な記者クラブ制度が、そういう人物を生み出した。記者が経営陣に入れるという異常なシステムも世界で唯一ですし。
菱山:おっしゃる通り、それは歪んでいます。結局、自民党がかつて金にまみれた総裁選挙をやって、そこに食い込んだ政治記者が、金にまみれた派閥からごちそうになり、そこで情報を取って、なおかつ情報をもとに影響力を行使してきた。そんな政治記者が、いまだに主筆として君臨しているのはおかしい。
ナベツネさんにも氏家さんにも恩義があるし、優秀なジャーナリストだったことも認めます。だからこんなことはいいたくありませんが、いまの二人はジャーナリスト失格。一日も早く後進に道を譲って引退すべきです。
※週刊ポスト2011年1月7日号