2010年、景気低迷が続いた先進国を横目に、新興国の株式市場では、史上最高値を更新する国が続々と登場した。はたして、このトレンドはまだ続くのか? 2011年の投資先として注目の新興国をBRICs経済研究所代表の門倉貴史氏が分析する。
* * *
投資先として私が2011年に最も有望視する新興国は、ロシアである。
ロシアは長い期間調整が続いていた分、これから伸びる勢いも余地も大きく、リバウンドを狙いやすい。さらに、ロシアの経済構造は極めて単純で、原油や天然ガスなどの資源価格が上昇していけば、経済成長率も自動的に加速していく特徴を持つ。
2009年後半から原油、天然ガスの価格が上昇してきたことにより、本来ならロシアの2010年の成長率も大幅に伸びるはずだった。ところが、今夏の猛暑の影響で小麦生産が大打撃を受け、全体の成長率が鈍化してしまったのだ。2010年のような厳しい猛暑さえなければ、2011年は高成長が大いに期待できるだろう。
そして、ロシアの次に注目しているのが、ブラジルである。
2014年のサッカーW杯、2016年のリオデジャネイロ夏季五輪に向けたインフラ投資が活発化しているのに加え、好景気を背景に個人消費も旺盛だ。鉄鉱石などの資源価格の上昇で、資源関連産業も好調。ブラジルの場合、時価総額が大きい企業のほとんどが資源関連であり、資源価格の上昇が、株価を押し上げる要因の1つにもなっている。
また、自動車産業に関しても世界的な生産拠点になりつつあり、自動車市場は中長期的にも拡大が見込まれる。内需と外需がそろって高い伸びをみせており、「死角」がほとんどない。
とはいえ、ロシアと比較すると過熱感があり、2011年には相対的に株価の上昇スピードにやや減速感が出てくるかもしれない。インフレ懸念も強まっており、段階的に利上げを行なっているが、その利上げの影響が2011年にどう出てくるのかも懸念材料だ。
ちなみに、ブラジルは今秋、レアル高の阻止に向け、海外からの債券投資にかかる「金融取引税」の税率を2%から6%に引き上げている。2011年のブラジルへの投資手段としては、人気のレアル債ファンドよりも、ブラジルの上場株式に投資するファンドや、ETF(上場投資信託)などが向いているだろう。
※マネーポスト2011年1月号