ロシアの大統領として初めてメドベージェフ大統領が北方領土に上陸するなど、北方領土問題の解決は遠のくばかりだ。ジャーナリストの櫻井よしこ氏は、旧ソ連の責任を追及し続けたポーランドに学ぶべきと指摘する。
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北方領土はロシアが戦後のドサクサに紛れて、日本から盗み取ったものです。日本はポツダム宣言を受け入れて1945年8月15日に降伏し、平和武装解除に無条件に応じました。
そこで戦闘を終えなければならないにもかかわらず、ソ連は米軍がいないことを確認しながら南下を続け、8月18日、初めて、北方領土に軍事侵攻しました。北方領土を占領し終えたのは9月5日でした。
日本はその3日前の9月2日、東京湾に浮かぶミズーリ号の艦上で降伏文書に署名しました。つまり、戦争も降伏の儀式も終わった時点でもなお、ロシアは軍事侵攻を続けていたのです。
その間、北方4島に住んでいた日本人は殺され、強姦され、島を追い出されました。にもかかわらず、ロシアは恥じることもなく、9月2日を「戦勝記念日」として制定したのです。
日本はまずこのことに猛然と抗議し、いかにソ連が国際法を無視した野蛮な行為で北方領土を不法占拠したか、ことあるごとに国際社会に訴えていかなければなりません。
ポーランドは、スターリンの時代に1万数千人のポーランド将校が殺害された「カティンの森事件」について、どんな国際会議でも必ず、ソ連、ロシアの責任を追及し続けました。民間でも『カティンの森』という映画を製作しました。ソ連、ロシアは一貫して「捏造だ」と主張し続けていましたが、ついに昨年4月、ソ連の責任を認めたのです。
日本も腰をすえて、ロシアの不法行為をしつこいほどに国際社会に訴え続け、北方領土の返還をことあるごとに求め続けなければなりません。
こうした国際情報戦を何年何十年と繰り返し、積み上げていくことが重要です。鳩山由紀夫前首相が政権についたとき、「半年で領土問題を解決してみせる」などと述べましたが、そんな甘い認識が、ロシアの大統領に北方領土上陸を許すことになったことを、民主党政権は猛省すべきです。
※週刊ポスト2011年1月21日号