菅政権が急変する東アジア情勢に対応できずにいる。民主党の安全保障政策の幼稚さを自民党の防衛政策通として注目が集まる石破茂・政調会長が改めて指摘する。
* * *
外交においてはどの国も自国の国益の実現こそがその目的であり、他国の利益など顧みない。では新たな超大国として膨張している中国はどのような「国益」を念頭に行動しているのかそれを理解、認識せずに、東アジアの安全保障の未来図を描くことはできない。
その意味で、民主党政権が外交、安全保障において、全く話にならないレベルであることは、明らかだ。
尖閣諸島沖での漁船衝突事件は、日本の法秩序、法執行に対する明々白々たる挑戦だったにもかかわらず、総理大臣も内閣も責任を那覇地検に押し付けた。本来であれば逮捕・起訴し、公務執行妨害を司法の場で裁くべきであり、仮に釈放するにしても、内閣の長たる総理自身が「私の責任において判断した」と明言しなくてはならなかった。
日本国憲法は、外交関係の処理は内閣の職務だと定める。その職責から逃げ出したのである。
また、現在の東アジアにおける差し迫った最大の脅威が朝鮮半島に存在することは衆目の一致するところだが、北朝鮮による延坪島砲撃についても、菅総理は「情報収集に万全を期す」などということしか発信できなかった。
中国に対して「北朝鮮への働きかけを求める」と言っただけで、中国が働きかけるはずはない。
■聞き手/松田賢弥(ジャーナリスト)
※SAPIO2011年1月26日号