「通貨戦争」なる言葉が生まれ、米国の金融緩和によって大幅な円高ドル安が進行した2010年。では2011年の為替相場どう動くのか。日経新聞の為替アナリストランキングで2009年まで5年連続1位に選ばれ、現在は外為どっとコム総研代表である植野大作氏が分析する。
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2011年のドル円相場を考える時に最も重要なのは、米国の景気の行方です。米国では2010年11月から「QE2(量的緩和第2弾)」と呼ばれる景気対策を講じ、2011年6月まで毎月750億ドル(総額6000億ドル)もの国債買い取りを行なっています。一部ではこれでも足りないと、増額や延長を求める声もあります。もしさらなる金融緩和となれば、一段の円高ドル安が進みます。
しかし、私の見方は異なります。様々な経済指標を見ていると、米国景気は上向く兆候が見られます。
米国の景気を見る場合、毎月第1金曜日に発表される失業率などの「雇用統計」が重視されます。確かにいまだに米国の失業率は高止まりし、雇用は改善していませんが、一方で「失業保険の新規申請件数」は、昨年秋から年末にかけて50万件から40万件台前半に減少してきています。
これがコンスタントに40万件を割ってくるようになると、雰囲気は変わる。そうなれば、2011年中に1ドル=90円台も視野に入ってくるでしょう。これは毎週木曜日に前週分が公表され、雇用統計よりも速報性があるため、米国経済の動向を見るうえではぜひ注目したいところです。
とはいえ、現時点で今年のドル円の動きを完璧に予測するのは、正直、プロでも難しいところがあります。
※SAPIO2011年1月26日号