今年3月に予定されている「東京国際アニメフェア」(実行委員長・石原慎太郎都知事)の事務局が、「このままの状況では実質的に実行不可能」と表明し、フェア開催に黄信号が灯った。昨年末に都で成立した青少年健全育成条例の改正案、いわゆる「マンガ焚書条例」を問題視する出版社の協力拒否が相次いでいるのだ。
この事態を招いた一義的な責任は石原都政にあるが、それを強力に後押しした“共犯者”がいた。条例に反対した都議のひとりがいう。
「知事や条例担当者の会見で懐疑的な質問をするのはインターネットメディアや雑誌の記者ばかりで、大メディアは質問もせずにダンマリ。それで都の主張を鵜呑みにした記事を作ってきたのです」
11月29日、マンガ家たちによる条例反対会見では、読売新聞の記者から耳を疑うような質問が飛んだ。「出版業界の自主規制が不十分だ」「不健全図書に指定されても区分陳列をするだけで、表現規制ではない」と、石原都庁の主張を“大演説”する勘違いぶりだったのだ。
なぜ読売をはじめとするクラブ記者は、曲がりなりにも活字メディアの担い手でありながら都庁の宣伝マンに成り下がっているのか。前出・都議の指摘は明快だ。
「提灯記事を書けば、都政の情報を優先的に流してもらいやすいのでしょう。昨年末の読売新聞には、都が漏らさないとわかるはずのない予算案の内容が、発表前に紙面化されていました」
これが“健全新聞”だそうだ。
※週刊ポスト2011年1月21日号