小沢一郎元民主党代表に対して、野党のみならず身内の民主党執行部からも証人喚問要求が突きつけられ、そこに大メディアが波状攻撃をかける。まさに四面楚歌に見えるが、かといって、降りかかる火の粉を払いのけようと、怒りの反撃に出るという様子も見えない。新進党、自由党で小沢氏と行動を共にしてきた二見伸明・元運輸相が現在の小沢氏の状況を語る。
「政局の“ここぞ”という場面になると小沢さんは隠密行動を取る。孫子がいう『知り難きこと陰の如し』、すなわち敵に動きを悟らせない戦い方が身についている。これから何かが起きる前触れでしょう」
「窮地の小沢」が余裕の表情を見せるのとは対照的に、政権浮揚に必死にもがく菅直人・首相の2011年は前途多難だ。最初の関門は1月13日の民主党大会。
昨年からの地方選連敗に黙っていられない都道府県連の代表たちが「総理にいいたいことがある」と大挙して上京してくる。小沢支持派もいきり立ち、「執行部の責任を問う」「打倒、菅内閣だ」と手ぐすねを引く。小沢氏招致に反対する川内博史・代議士が語る。
「支持率低下の一番の原因は、菅内閣に総選挙公約を実行する姿勢がないからです。今こそ挙党態勢で初心に返るべきなのに、小沢さんの国会招致を強行すれば支持率が回復すると考えている。責任転嫁も甚だしい」
もっとも、小沢氏の戦略は少し違うようだ。小沢支持派が執行部批判のために両院議員総会開催を求める署名活動を始めると、小沢氏は側近を通じて「まだ我慢しろ」と指令を出した。昨年のうちに署名は開催に必要な人数を超えているのだが、“司令官”の出撃命令が出ないまま“寸止め”となって年を越えた。
※週刊ポスト2011年1月21日号