1980年代、冷戦構造最終期の外交の舞台で日本の首相として、各国首脳と同等に渡り歩いてきた中曽根康弘氏。中国との関係を中心とした不穏な東アジア情勢について、中曽根氏が提言する。
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――現在の東アジア情勢からすると、特に安保政策への不安は大きい。「中曽根内閣」ならば、どう対処するか。
中曽根:「対米関係とアジアの近隣外交をどう結合させていくかが大切です。中国の対米政策がどう変化していくかがメルクマール(指標)になるでしょうね。なぜなら、その外洋戦略、航空母艦の建造など、アメリカと対立する要素は多い。その一方で中国の経済力、貿易力の増大は、一時の日本の膨張を凌ぐ勢いになっていくでしょう。その力の展開のなかでアメリカと対立しないようにすることが、中国の一番苦労する点だろうと思います」
――だからアメリカと協力して膨張を封じ込める?
中曽根:「封じ込め、という考え方はまさに時代錯誤ですね。そうではなく、むしろ日本はアメリカを利用する立場にあるということです。アメリカを誘導して共に中国に対処していく方策を探るべきです」
※週刊ポスト2011年1月21日号