かつて官房機密費は、内閣が交代する際には「金庫を空っぽにする」ことが、慣例になっていた。ジャーナリストの上杉隆氏と本誌週刊ポスト取材班も追及キャンペーンのなかでこの問題を取り上げたが総理退陣の際、官邸に残された最後の儀式が、機密費の“山分け”だったのである。
ある官房長官秘書経験者はこう語る。
「基本は、総理と官房長官で山分け。余った分はそれぞれの秘書たちが、お世話になった議員や官僚、評論家や記者などメディア関係者にも配って使い切る。引き継ぎのときは、金庫を空にするのが礼儀だった」
2009年8月の総選挙で政権交代が実現すると、この問題は一気にクローズアップされることになった。総選挙直後の9月1日に、時の官房長官だった自民党の河村建夫氏が2億5000万円の機密費を引き出したことが明らかになり、“持ち逃げ疑惑”が浮上。大阪の市民団体が情報公開請求を求めて裁判を起こしたのだ。
民主党政権の実現によって、いわば、パンドラの箱が開いたのである。
この件に関して、当時官房長官だった平野博文氏は、「(金庫には金が)まったくございませんでした」と答弁している。
※週刊ポスト2011年1月21日号