中国脅威論が叫ばれる中、その最前線に立つのが台湾だ。しかし、国民党の馬英九政権になって2年半、台湾は脅威に立ち向かうどころか、急速な中国化に進んでいる。もはや強大化する中国には恭順しかないのか。かつて台湾の民主化を指導した李登輝・元台湾総統が、台湾立て直しの腹案を語った。
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中国の歴史というのは、共産党であろうが国民党であろうが中華帝国であり、皇帝が治める人治スタイルです。清政府は日本の明治維新を真似て、欽定憲法大綱を作って君主勢力の強化に乗り出しました。孫文は、米国はじめ他国の統治方法、民主主義を持ち込もうとしましたが、力不足のまま軍人の蒋介石にひっぱりまわされ終わりました。
長い歴史を経ても、中国は考えを改めることができず、同じ壁の内側をぐるぐる回っています。しかも法を知って法を破る、善悪転倒、賄賂特権の習性など、生きるためには何をやっても構わないという感覚すら、まかり通っています。その中国に侵食されないためにも、台湾は自由と民主を維持し、発展させるべきなのです。
ところが台湾人が作った政党・民進党政権の8年間(2000~08年)、民主化を深化させる仕事ができず、中国問題については恐々とした対応に終始してしまいました。さらに国民党政権になり、自由と民主主義という制度自体が損なわれ、中国大陸に侵食される危険性が高まっています。
台湾人である私は、台湾の民主主義を守っていくためにも2012年の選挙で総統を交代させることに集中していきます。それはひとえに、中国との有益でない関係を放棄してもらうためです。
※SAPIO2011年1月26 日号