今年も新年一般参賀には多くの国民が集い、日本国民統合の象徴である天皇のもと新たな年を祝った。しかしその一方で、私たちは皇室の実態についてどれほど知っているだろうか。天皇とは何か、皇室とは何か。『新天皇論』(小学館刊)がベストセラー中の漫画家・小林よしのり氏が、天皇家の「万世一系」の謎について解説する。
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わしは新著『新天皇論』で、「万世一系」に疑問を呈した。明治憲法第一条には「大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス」とある。一方、皇室典範は「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」と定めている。男系とは、天皇の父親が天皇または天皇の血筋で、父親を遡っていけば初代神武天皇に辿り着くことになることを指す。このことから、万世一系=万世男系とのイメージが作られてきた。
しかし、「万世一系」という言葉の使用も、「男系男子」という皇位の縛りも、実際には明治以降に限られたものなのだ。歴史を振り返ると、必ずしも厳密に男系継承が重視されてきたとはいえない。
明治以前には、8人の女性天皇が存在し、なかには母(斉明天皇)から息子(天智天皇)、母(元明天皇)から娘(元正天皇)へと受け継がれてきたケースもある。元正天皇の父親は草壁皇子といい、皇族だが天皇ではない。つまり、男系といいながら、母親が天皇という事実上の女系継承が行なわれてきたわけだ。
その後、明治のはじめに皇位継承を法制化するにあたっても女帝容認が検討されたが、時代の「男尊女卑」思想を考慮し、男系男子に限定されることになった。「万世男系」は「男尊女卑」思想の産物だったのだ。
さて、男系男子に限るという、「史上最狭」の皇位継承資格によって、いま皇室に1500年来の危機が訪れている。このまま行くと皇位は悠仁さまへ受け継がれることになるが、周りに男系男子はいない。女性皇族方が続々と結婚適齢期を迎えて民間に降ると、皇居には悠仁さま一人しかいなくなる日が来るかもしれない。
わしは、直系の愛子さまが皇太子になれるように皇室典範を改正すべきだと思っている。女性天皇も女系天皇も認めてしまえばいいのだ。同じく、真子さまや佳子さまに皇室へ残ってもらうため女性宮家の創設も検討すべきだ。
歴史学者の田中卓氏によると、皇統を表わすには、「万世一系」よりも、吉田松陰が使った「萬葉一統」の方が的確ではないかという。皇位は、男系男子の一本の筋=一系ではなく、女帝も含めた帯=一統でつないできたということだ。歴史から見ても、女帝に道を開くために「皇室典範」を改正すべきだろう。そもそも、皇祖神である天照大神は女性神なのだから。
※週刊ポスト2011年1月21日号