昭和を代表する総理大臣のひとりである中曽根康弘氏に、対立する菅直人総理と民主党・小沢一郎氏との関係について、話をきいた。
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――小沢氏は、今のような政治では政権交代の意味がないと批判している。
中曽根:「独立性を明示することを心掛けているんでしょう。菅君の場合は、鳩山君の行き過ぎを是正するあまり、自民党に近寄り過ぎてしまった、と」
――そうした路線対立の結果、小沢氏は、石もて追われる身になっている。
中曽根:「小沢君にとっては、蠅が飛んでるとか、蜂がブンブン回っているとか、その程度に思ってるんじゃないですか(笑)。要するに政治力の差ですよ。今は内部で党員やら議員をどちらが掴んでいるかという勝負をしている。議員総会やら党大会が、その前哨戦になっているわけですね。小沢君を見ていると、今は我慢の時期だと腹を決めて、党の議論より世論を中心に自分の進む方向を決めているんだろうと思います。それは次の天下を狙う者の当然の在り方ですね」
――国民に見える「政局」では、小沢氏は追い詰められているようにも見える。
中曽根:「それは一種のマヌーバ(戦略)ですよ。初めからいうことを聞いたら存在意義はないわけですから。今は代表選で互角の勝負をした勢力を非常に大事にして、これから外縁勢力を発展・拡大させるということでしょう。それまでは、国民世論やジャーナリズムの批判に対して非常に自重した態度に出ていますね」
※週刊ポスト2011年1月21日号