政権交代から1年半のカオス状態で、政界の力学は大きく変貌した。自民党を支えてきた各種団体の集票力は衰え、一部は小沢一郎氏の工作によって民主党支持に衣替えしたものの、小沢氏が党運営の表舞台から去ると、多くの組織は根無し草状態になった。岡田執行部が法人税減税を餌に企業献金を求めているのも、突然、たちあがれ日本の連立入りが浮上したのも、せっかく築いた支持基盤が揺らいでいる焦りからだ。
大胆な言い方をすれば、今の日本で500万票、600万票を動かせる看板といえば、「創価学会」と「小沢一郎」だけなのだ。
だからこそ、2つの大きな引力は政局を動かす力となる。民主党執行部も自民党もなりふり構わず公明党・創価学会にすり寄る姿勢を強めるのは、「反小沢」の戦いを続けるには、その力が必要不可欠だからである。ただし、現在の自民党には学会・公明と「首脳交渉」できる責任者はいないし、民主党にしても、菅氏が“学会美術館”を訪問し、仙谷氏が「公明党に人脈がある」と豪語しても、しょせんは付け焼き刃だ。学会・公明の様子見は、自民、菅民主、小沢を等距離に見た結果かもしれない。
さらに池田大作・創価学会名誉会長が昨年5月以降、学会の主要行事にも姿を見せなくなり、第一線から退く「Xデー」が現実味を帯びていることもある。公明党のある中堅議員はこう話す。
「カリスマの時代が終われば、従来のような選挙はできなくなる。公明党議員には動揺が広がっており、党の路線決定が難しくなっている」
かつて小沢氏は、新進党に公明党を取り込み、学会と公明の分離を実現させた。小沢氏は、公明党を「今こそ国民政党になれ」と口説き落とし、側近には「体内に取り込むことで公明党を溶かすことが日本の政治の未来にとって大切だ」と説いたと伝えられている。小沢氏の懐刀として公明の新進党合流に奔走した平野貞夫・元参院議員が語る。
「公明党が小沢を信頼できる政治家と見ていることは間違いない。選挙では何度も戦ったが、これまで小沢は一度も学会批判をしたことがない。だから公明党は民主党が政権を取ると小沢に近い市川雄一・元書記長を復権させた。時期はともかく、小沢は今でも公明・学会を吸収することを視野に入れていると思う」
※週刊ポスト2011年1月21日号