「向こう数か月間、世界経済は拡大していく。日本も含まれる」――経済協力開発機構(OECD)が1月10日に発表した今年の見通しである。リーマン・ショック以降、景気停滞に苦しんでいる現状を見れば、にわかには信じられないかもしれない。だが、世界的にも国内的にも「2011年」は、景気のV字回復が“約束された年”であるといえるのだ。
現職大統領には経済浮揚の“劇薬”がある。「戦争」である。
ブッシュ・シニアは1991年に約600億ドルの戦費を計上する湾岸戦争を開始し、米国に戦争特需を引き起こす。しかも、戦費の大半は外国が拠出したため、米国の負担はゼロだった。父の手法に倣ったブッシュ・ジュニアは2003年にイラク戦争を起こし、同年に戦費460億ドルの予算を組み、2003年の米株価は急激に回復した(ただし、戦争が泥沼化したため、結果的に膨大な財政赤字を抱えた)。
政治経済評論家の板垣英憲氏の解説。
「軍需関連産業が15~20%を占める米国は、数年に1度の割合で大規模な戦争に米軍が参戦することを前提として経済が成り立っているといえます。戦争は現職大統領が“強い指導者像”を国民にアピールできる手段であると同時に、最も簡単で効果的な景気浮揚策なのです」
善悪は別にして、戦争は「起きる」のではなく「起こす」というのが冷徹な国際政治の真実なのだ。今月下旬にはイラン核開発を巡る国連安保理が開催される。昨夏に「史上最も厳しい」といわれる対イラン制裁法に署名したオバマ氏は、安保理でも各国に強硬な姿勢を求めている。
さらにゲイツ国防長官は「北朝鮮に対しても断固たる姿勢で臨むべきだ」と発言した。“イランがダメなら北朝鮮でもいい”といっているように見える。それほど米国には“戦争への渇望”があるのだろう。
ちなみに湾岸戦争は1月、イラク戦争は3月と、いずれも年初のうちに起きている。イラン、北朝鮮という“火薬庫”にオバマ大統領が火を付けるのは、そう先の話ではないかもしれない。
※週刊ポスト2011年1月28日号