菅直人首相は1月5日の夜、テレビ朝日『報道ステーション』に生出演したが、その舞台裏を見ると、小沢氏に対する異様なまでの対抗心が見えてくる。実は、その時間帯は小沢一郎・元民主党代表が日本BS放送(BS11)に出演し、インタビューに答えた時間とピタリ重なっていた。
首相官邸関係者はこう語る。「小沢氏のBS出演は事前に放映時間がわかっていたから、総理は『小沢に勝ちたい』とムキになり、より視聴率の高い地上波で自分の出演をぶつけて小沢番組を潰そうとした」
首相側近たちは、民主党内や新聞・テレビの記者に「総理の重大発言が出る。必ず見るように」というお触れを出し、番組進行にまで工夫を凝らした。『報道ステーション』はBSでの小沢氏インタビューが終わるまで、一切CMを入れず、“絶対に小沢の方にはチャンネルを変えさせない”という進行だったのだ。
念の入ったことに、同時間帯に岡田克也・幹事長までネットのニコニコ生放送に出演し、小沢番組潰しの“連携プレー”を演じた。
それで菅首相は、「これで小沢に勝った」と本気ではしゃぎ、次は6月まで消費税増税に政治生命を懸けて取り組むのだと言い出した。小沢氏に「説明責任」を求めてきた首相と幹事長が、メディアを総動員して小沢氏の肉声を国民に届かないように掻き消そうとする。もはや常軌を逸している。
一国の首相が虚空を睨んで、本人にしか見えない亡霊でも追い払うように、“斧”を振り回す姿は正視に堪えない。菅首相が『報道ステーション』に登場すると同時に多くの視聴者はチャンネルを切り替え、視聴率はわずか6.9%と散々なものだった。同番組の平常放送の半分の数字である。
※週刊ポスト2011年1月28日号