国際ニュース解説の達人、池上彰氏が、メドベージェフ大統領の国後島訪問について、日本が取るべきであった外交を分析し、菅直人総理が言うべきだったメッセージを提案する。
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各国でナショナリズムが熱を帯びる中で、日本に求められるのは、冷静かつ強かな外交です。
2010年11月、メドベージェフの北方領土訪問に対抗して前原誠司外相が上空から北方領土を視察した折、ロシア外務省の報道官は「わが国の美しい景色に見とれることに何の反対もない」と述べました。何とも気の利いたセリフです。ならばメドベージェフが国後島を訪問した際、菅直人首相も前原外相もこう言っていたらどうだったでしょう?「ウェルカム・トゥ・ジャパン」――。
相手国の強硬姿勢が国内事情にあることを見抜き、交渉相手の面子を損ねない程度に柔軟に対応する。時には経済援助などの“手土産”や、ブラフ(脅し)も必要でしょう。
日本外交は、昨年の苦い経験を奇貨として、2012年に備えて生まれ変わらなくてはならないのです。
※SAPIO2011年1月26日号