AKB48の「ヒットの法則」や「成功するビジネスの秘密」はどこにあるのか。経済アナリストであり、秋葉原をこよなく愛する森永卓郎氏が解説する。
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関連グッズの打ち出しなども、秋葉原に集うファンの心を刺激するような仕掛けがふんだんに施されている。
例えば、セブン-イレブンで対象商品を700円以上購入した時にもらえるくじを引き、当たりが出るとAKB48のメンバーそれぞれがデザインしたベアブリック(クマ型のフィギュア)がもらえるという企画があった。こういった企画は「48種類全てを揃えたい」とつい考えてしまうオタクの心理を非常によくとらえている。
何を隠そう、私自身が全種類コンプリートを果たすために対象商品を買い続けたのだから間違いない。いくら買っても全種類揃えられず、最後にはコンビニでクレジットカードを限度額まで使い切ってしまった。
それでも、大島優子、前田敦子といった上位メンバーのデザインしたベアブリックが手に入らない。くじを引き続ける中で、すっかり顔見知りになったコンビニ店主と話をしていたところ、当該商品が当たるキャンペーン期間開始直後に私と同じようにお金を注ぎ込んだファンたちが数多くいて、上位メンバーのベアブリックはすぐになくなってしまったのだという。
不況下でビジネスを成功させるために必要なことは、価格競争という消耗戦に巻き込まれないことである。つまり、値下げしなくても済むもので勝負するということ。
それは極論すれば、「買う人にとっては価値があるけれども、関心のない人にとっては無価値のもの」を売るということになる。私にとってのAKB48のベアブリックなどはまさにこの典型だったと言えよう。
※SAPIO2011年1月26日号