日本の国力の衰退は政治や経済だけではない。スポーツも同様に今、中国・韓国にしてやられている。中国や韓国は国をあげての「選択と集中」でメダルを量産している。日本でもそうした議論はあるが、それに対し、スポーツジャーナリストの二宮清純氏は、スポーツの多様性が失われると警告する。そして、国家主導による弊害について指摘した。
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冷戦時代、東ドイツをはじめとする旧社会主義国家はスポーツを国威発揚の最大の手段と見なし、身体能力に秀でた子供たちを全国からかき集め、体のサイズや適性に応じて取り組む種目まで国家が指定した。
勝つためにはドーピングはもとより身体改造もいとわなかった。その弊害は至るところで報告されている。
日本のあるスポーツドクターから、こんな話を聞いたことがある。
「女性にとって胸が大きいと競技の邪魔になる。キューバではトップアスリートがオッパイの脂肪の一部を削る手術を受けていた。“豊胸手術”の逆の“貧乳手術”ですよ。ここまでして勝ちたいのか。国家がスポーツを利用した許し難い例だと思いますね」
※SAPIO2011年1月26日号