自分を鍛え抜いたスラッガーの清原和博選手の成績が晩年振るわなかったのに対し、イチロー選手が活躍し続けるのはどうしてか。その違いを、諏訪中央病院名誉院長・鎌田實氏(62)が解説する。
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自分の持っているエネルギーを100%出すために「サイキングアップ」という方法がある。アップテンポの音楽をかけて、自分が勝つイメージを高めテンションを上げていく方法だ。スポーツのメンタルトレーニングに使われる。
僕の大好きだったスラッガー、清原和博選手は、まるでレスラーがリングに向かうように気持ちを奮いたたせ、長渕剛の『とんぼ』をテーマソングにバッターボックスに入った。これはオオマチガイ。晩年、成績はふるわなかった。
かたや大リーガーのイチローは、バッターボックスに入る前に脱力系のルーティンを繰り返す。ストレッチや素振りの回数、ボックスに入る歩数まで同じ。バットをぐるりと回し片袖を引っ張る仕草をする。
一連の動作をルーティン化することでストレスマネージメントをして精神状態をフラットに保っているのだ。攻めるときにはやみくもに前へ、ではなく、時には後ずさりしながら豹のように攻める。この間合いが大事だ。
※週刊ポスト2011年1月28日号