店の駐輪場に置いてあったタンスに自転車をぶつけてしまった36才主婦。店主は弁償してというが、全額負担するべきか? この質問に弁護士の竹下正巳氏が答える。
【質問】
リサイクルショップの駐輪場に置いてあった洋服ダンスに自転車をぶつけて傷をつけてしまいました。店主は「弁償してくれ」と怒っています。私に非があることは認めますが、品物を駐輪場に置きっぱなしにしていた店側にはまったく責任はないのでしょうか。全額を負担せずに済む方法はないでしょうか。(36・主婦)
【回答】
あなたの責任を軽減する理屈は、過失相殺です。つまり、店にも落ち度があるから全額負担する義務はないという主張です。これがいえるかは、どの場所にどのような状態で洋服ダンスを置きっぱなしにしていたかによります。
店主は、顧客の便宜をはかるために駐輪場を設置しているのですから、そこで安全な通行をさせる義務があります。タンスの放置がこの義務に違反しており、そのことが原因でぶつけたというのであれば、店主にも過失があったといえそうです。
例えば、駐輪場の利用客が多いのにそこにいたる通路に放置され、通行の邪魔になっていたような場合、夜間照明が不十分であるのに見にくい位置に置いてあったような場合が考えられます。仮にタンスにぶつかってあなたがケガをしてその治療費の賠償請求ができるような場合だと、店のタンスの損害も相当減額になるでしょう。
例えば、駐輪場や通路の陥没などの施設そのものに通常有すべき安全性を欠いた欠陥があれば、それによる事故について店の責任は免れません。そうした施設でなくても、通行の安全を損なう物品などを置いた場合にも、程度の差こそあれ過失が認められるのが普通です。洋服ダンスが置かれていた状況から接触を避けることが困難であったことを説明し、店側にも落ち度があったことを理解させ、減額交渉してはいかがですか。置きっぱなしというのですから、危ない思いをした人もいると思います。他のお客の口添えを受けると有効でしょう。
事故は、どちらかが一方的に悪いということは珍しく、加害者がよほどの不注意でない限り、被害者側にも何らかの落ち度があるのが普通です。しかし事実に基づく指摘が前提になり事故状況の正確な復元と原因の分析が必要です。写真やメモなどで証拠や記憶を残すことも大切です。
【解説】
竹下正己弁護士
1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。
※女性セブン2011年1月20・27日号