2008年にノーベル物理学賞を受賞した益川敏英博士は「今の行政は、教育のあり方を考え直すどころか、まったく筋違いのことをやっています」と指摘する。同氏が民主党の「事業仕分け」を批判する。
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研究者は自分が重要だと思うことを最大限に研究していきたいと思います。でもそんな研究を全部認めたら予算をオーバーするのは当たり前。査定という作業が必要なのは当然です。
しかし「事業仕分け」と称し、パフォーマンスみたいな格好で、テレビで面白おかしくやるのは賛成できない。国に予算を要求する人に対して、その学問が分かっている人がレフェリー役になり、もっと科学的にやるべきです。
「そんなスピードでやらなくてもいい」とか「この部分は落としてもいい」といった議論をするなら、どちらが優勢なのかは、行政側が見ていても分かる。研究者同士が議論していると、痛いところを突かれると表情に出てきます。
普段エラそうにしている人が質問されてタジタジとなる光景をテレビでみると、一般の人は面白いかもしれないが、それは行政のやるべきことではないと思います。
※SAPIO2011年1月26 日号