リストラに遭い、ビルの屋上から飛び降りようとした40才の主人公・ヤスオは、突如現れた黒服の男とある契約を交わす。それは多額の金と引き換えに臓器を提供するというものだった。限りある日々のなかで、ヤスオは命のはかなさとかつて抱くことのなかった愛に目覚める?
人気絶頂のなか、所属事務所を退社。ポプラ社が主催する「第5回ポプラ社小説大賞」を受賞したにもかかわらず、賞金2000万円を辞退するという話題性で大注目を浴びた俳優・水嶋ヒロ(26)の処女作。
「読みやすさは抜群。ふだん小説をあまり読まない人でも気軽に手にとることができる作品です」と解説してくれたのは書評を数多く手がけるライターの瀧井朝世さん。
読み進むうちに驚かされるのが怒涛のように押し寄せるオヤジギャグ。なにせ“独身だけに読心術”や“まさかのマッカーサー”など、昭和世代が胸の内で小躍りしそうな駄洒落が満載なのだ。
「ともすればひとりよがりでセンチメンタルになりがちな“命”というテーマを、軽いタッチで表現したところに、エンタメとして読ませようという工夫を感じます」(瀧井さん)
ヒロイン役として登場するアカネに、ついつい妻の絢香(23)を連想してしまう…という人も。
「読みどころは後半部分ですね。前半の“死の契約”は本を読み慣れている人にとってはわりとありきたりの内容なんです。ただ、後半、予測できない流れにもってきているあたりは料理の仕方がうまく、個性が出ていると感じました」(瀧井さん)
※女性セブン2011年2月3日号