2010年の投資信託業界で大人気だったのが、ブラジルレアル建てを中心とする「通貨選択型ファンド」。2011年も人気が続くと見られるこの種類のファンドの仕組みをリッパージャパンのファンドアナリスト、篠田尚子氏がわかりやすく解説する。
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2010年の投資信託業界は、カテゴリー別ファンドの販売状況に大きな差が見られた。株式市場の低迷を反映してか、株式を組み入れた株式型やミックス型ファンドが不振だった一方、通貨選択型と呼ばれるファンドが圧倒的な人気を集めた。
10月までのカテゴリー別における資金流出入ランキングの上位をほぼ独占するとともに、発売から2年足らずで純資産残高の合計が6兆円を超える大ヒットとなっている。
通貨選択型ファンドの第1号は、2009年1月に設定された『野村米国ハイ・イールド債券投信(ブラジルレアルコース)毎月分配型』だ。この商品名からもわかるように、通貨選択型は、表面利回りの高い外国債券(ハイイールド債)に投資するタイプが多い。そのため、『グローバル・ソブリン・オープン』(通称・グロソブ)のような外債ファンドと、一見似ている。
しかし、従来の外債ファンドが投資対象の債券の利回りだけを狙うのに対して、通貨選択型ファンドは、運用する通貨も選び、その通貨の金利差も得られる点が大きく違う。
例えば、米国の社債に投資するファンドなら、通常は米ドル建てで運用し、インカムゲイン(金利収入)は債券の利回り分だけ。だが、ブラジルレアル建てにすれば、レアルの高金利を上乗せできる。つまり、債券と通貨の2つの金利を享受できるのだ。そのため、15~20%の利回りに達する分配金を得られるファンドも珍しくない。こうした特徴から、通貨選択型ファンドは、「ダブルデッカー(2階建て)ファンド」と呼ばれている。
したがって、選択される通貨もブラジルレアル、豪ドルといった高金利通貨の人気が高い。中でも、ブラジルレアルの人気はずば抜けており、通貨選択型の6割以上を占めるほどだ。
2008年にブラジルのソブリン格付けが投資適格級に格上げされて以降、投資対象としての魅力が急速に高まった。ブラジル政府による断続的な利上げにより、政策金利は10.75%(12月時点)もの高水準。また、ブラジル政府は、レアルの取引に規制をかけており、事実上、FX(外国為替証拠金取引)や外貨預金で投資できない。その結果、レアルに投資する手段として、レアル建て通貨選択型ファンドが選ばれているともいえる。
※マネーポスト2011年1月号