国内

児童養護施設出身者の大学進学率はわずか10%という現実

 全国に広がる「タイガーマスク運動」によって、クローズアップされる児童養護施設。それは、様々な事情で家族と暮らせない18才未満の子供たちが暮らす施設のことだが、18才を超えた子供たちは、どうするのだろうか。

 18才を超えると、子供たちは卒園し、施設を巣立っていく。大学には進学せず、社会に出て自立するケースがほとんどだという。「タイガーマスク運動」でランドセルのプレゼントを受けた東京・二葉学園の施設長で、全国児童養護施設協議会の制度政策部長・武藤素明さんはこういう。

「大半が就職します。中小企業やサービス業が多いです。大学に進学する子たちもいますが、全体の10%程度。全国の大学進学率は5割だから、やはり開きがあるんです。理由はやはり経済的保障がないこと。私立大学は授業料だけで年間100万円近くかかりますから」

 また、18才を待たずに施設を出る選択肢のひとつに、養子縁組がある。10才までの子供が入所している東京愛育苑向島学園の富田富士子園長の話。

「何年かにひとりのわずかな割合ですが、養護施設から養子縁組をして施設を出て行く子がいます。また、うちの施設では、里親に引き取ってもらう予定の子供が今年は1、2人います」

 多くの人が誤解しがちだが、「養子縁組」と「里親制度」とは違うものだ。養子縁組は子供を実子として引き取り、戸籍上の親子になること。一方、里親制度は養護施設同様、児童福祉法に定められた制度で、戸籍上は他人のまま、子供と「同居者」という立場になり。一定期間育てる制度のこと。養子縁組には家庭環境や収入などに厳しい審査があるが、里親になるための資格は、それに比べハードルが低い。

 このため養子縁組を認められなかった夫婦が里親になるケースが多いという。(手続きは児童相談所を窓口に行われる)。前出の武藤さんはいう。

「施設から里親の元に行く子供もいますし、里親との関係が不調になって施設に入所してくるという子供もいます。でも一般的に里親さんには施設より家庭で預かるほうがよいという考えがあって、施設の職員と意思疎通ができにくい現実があります。これからは、里親さんと施設との連携と交流が必要になってくると思います」

※女性セブン2011年2月3日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

2025年はMLBのワールドシリーズで優勝。WBCでも優勝して、真の“世界一”を目指す(写真/AFLO)
《WBCで大谷翔平の二刀流の可能性は?》元祖WBC戦士・宮本慎也氏が展望「球数を制限しつつマウンドに立ってくれる」、連覇の可能性は50%
女性セブン
被害を受けたジュフリー氏、エプスタイン元被告(時事通信フォト、司法省(DOJ)より)
《女性の体に「ロリータ」の書き込み…》10代少女ら被害に…アメリカ史上最も“闇深い”人身売買事件、新たな写真が公開「手首に何かを巻きつける」「不気味に笑う男」【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
「名球会ONK座談会」の印象的なやりとりを振り返る
〈2025年追悼・長嶋茂雄さん 〉「ONK(王・長嶋・金田)座談会」を再録 日本中を明るく照らした“ミスターの言葉”、監督就任中も本音を隠さなかった「野球への熱い想い」
週刊ポスト
12月3日期間限定のスケートパークでオープニングセレモニーに登場した本田望結
《むっちりサンタ姿で登場》10キロ減量を報告した本田望結、ピッタリ衣装を着用した後にクリスマスディナーを“絶景レストラン”で堪能
NEWSポストセブン
日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
笹生優花、原英莉花らを育てたジャンボ尾崎さんが語っていた“成長の鉄則” 「最終目的が大きいほどいいわけでもない」
NEWSポストセブン
出席予定だったイベントを次々とキャンセルしている米倉涼子(時事通信フォト)
《米倉涼子が“ガサ入れ”後の沈黙を破る》更新したファンクラブのインスタに“復帰”見込まれる「メッセージ」と「画像」
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん
亡くなったジャンボ尾崎さんが生前語っていた“人生最後に見たい景色” 「オレのことはもういいんだよ…」
NEWSポストセブン
実業家の宮崎麗香
《セレブな5児の母・宮崎麗果が1.5億円脱税》「結婚記念日にフェラーリ納車」のインスタ投稿がこっそり削除…「ありのままを発信する責任がある」語っていた“SNSとの向き合い方”
NEWSポストセブン
峰竜太(73)(時事通信フォト)
《3か月で長寿番組レギュラー2本が終了》「寂しい」峰竜太、5億円豪邸支えた“恐妻の局回り”「オンエア確認、スタッフの胃袋つかむ差し入れ…」と関係者明かす
NEWSポストセブン
シーズンオフを家族で過ごしている大谷翔平(左・時事通信フォト)
《お揃いのグラサンコーデ》大谷翔平と真美子さんがハワイで“ペアルックファミリーデート”、目撃者がSNS投稿「コーヒーを買ってたら…」
NEWSポストセブン
愛子さまのドレスアップ姿が話題に(共同通信社)
《天皇家のクリスマスコーデ》愛子さまがバレエ鑑賞で“圧巻のドレスアップ姿”披露、赤色のリンクコーデに表れた「ご家族のあたたかな絆」
NEWSポストセブン
中国で延々と続く“高市降ろし”の反日攻勢にどう対抗するか? 「解決策のカギの1つは公明党が握っている」、大前研一氏の分析と提言
中国で延々と続く“高市降ろし”の反日攻勢にどう対抗するか? 「解決策のカギの1つは公明党が握っている」、大前研一氏の分析と提言
マネーポストWEB