AKB48はなぜ社会現象となったのか。ファンは何に魅了され、虜となったのか。デフレ時代に売れまくるアイドルグループのファン心理を、精神科医の和田秀樹氏が解き明かす。
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広く世間一般から支持を集めた背景には、芸能界でよく見られる、「昔からのファン」と「新しいファン」とのあからさまな待遇の差がないことだ。
これまでならば、初期からファンクラブに加入していたコアファンが、「選抜総選挙」で何票も権利を得られてもおかしくなかった。しかし、実際には買ったCD1枚につき1票で誰もが平等だった。
では、総選挙はコアファンに不評だったかと言えば、そうでもない。彼らにしてみれば、秋葉原の小劇場のアイドルから全国区のアイドルになり、かつての親近感が薄れつつあった中で、投票によりグループに参加できることで安心感を得られた。
(プロデューサーの)秋元康氏がどのような戦略を描いていたか、知る由もないが、結果的に、総選挙は新旧ファンがバランスよく喜ぶイベントだった。
今の若者たちには平等感がない。たとえ学校内で成績表を張り出さず、競争をさせなくとも、社会に出れば正社員と派遣で大きな格差が存在することを誰もが知っている。
彼らは「1億総中流」などという言葉は知らない。格差を感じており、「どうせ俺たちはいつまでも…」という感覚がある。その点、AKB48には平等感があるのだ。
また、平等感と同時にファンが得ているのは仲間意識、連帯感だろう。大人数で統一された衣装は、チアリーディングのようで、グループの体育会的コンセプトとも合致している。これが揃ってダンスをし、パフォーマンスをすれば、ある種の連帯感が感じられる。日常の学校生活では得られない、仲間意識を感じられるのも人気の要因だろう。
※SAPIO2011年1月26日号