今年100歳を迎える柴田トヨさんの詩集『くじけないで』が、今多くの人の心を掴んでいる。昨年3月の発売以来版を重ね、すでに150万部を突破。白寿の女流詩人が紡ぐ珠玉の言葉に魅了される人は後を絶たない。
詩を書き始めたのは、平成に入った90歳を過ぎてからだった。趣味だった日本舞踊が踊れなくなったことで気落ちしたトヨさんを慰めるため、息子の健一さんが勧めたのだ。産経新聞の連載「朝の詩」に投稿を始めると、またたく間に注目され、自費出版することに。本書はそれを拡充して昨年3月に刊行したものだ。
「くすぶっていた心の重み、自信のなさがすっとなくなりました」(46歳・女性)
「亡き母を思い出し、読んでいるうちに涙があふれるので困ります」(80歳・男性)
人の心を揺り動かす詩が紡がれるのは、ベッドで横になっていたり、テレビを見ている夜だという。頭に浮かんだ言葉を鉛筆でメモし、それを毎週土曜日に健一さんに朗読してもらいながら何度も書き直す。ひとつの作品に1週間以上はかかる。
「100万部だなんて、なんだか実感がわきません。あっという間に100歳になっちゃったけど、楽しく暮らしながらこれからも“くじけないで”詩を書いていきます。人生、いつだってこれから。だれにも朝はかならずやってきます」
明治44年6月26日生まれのトヨさん。あと5か月で100歳。今日も思いを紡いでいる。
※週刊ポスト2011年2月4日号