政界から財界まで、幅広い“信者”を持つ経済予測のエキスパートとして、その道では広く知られた菅下清廣氏が、日本が陥ったデフレスパイラルのメカニズムを解説する。
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日本人は、どちらかというとインフレとかバブルという言葉にネガティブなイメージを持ちますが、実際にはデフレこそ最悪です。もちろん経済にはあらゆる現象に良い面と悪い面があり、そもそも「良いか悪いか」という二元論こそ意味がないのですが、今のような長期間にわたるデフレに関しては、日本を完全に破壊するほど大きな問題だと断言できます。
デフレが長期化すれば、国民は「待っていれば値段が下がる」というデフレマインドを持ちます。すると家でもクルマでも、今買うのは損だと思うから、買わなくなる。売れなければ企業は生産を縮小する。そして余分な雇用をカットし、あるいは賃金を下げることになる。するとますます消費が冷え込んで景気が悪化する――というのが、いわゆるデフレスパイラルのメカニズムです。
時代が違うので単純に金額では比較できませんが、私の感覚では、今の長期デフレによって日本全体で失われた富は、第二次世界大戦で失った富を大幅に上回る規模なのです。
日経平均株価は1989年12月の3万8915円から、一時は5分の1以下に下がった。これだけで400兆円から500兆円の資産が失われたことになります。
さらに日本列島の不動産の全価格は、1500兆円とも2000兆円ともいわれますが、これはピーク時から少なくとも5分の1にはなっている可能性があります。土地はそこまで下がっていませんが、場所によって建物は、バブル時代に10億円で建てたビルや別荘が1億円とか2億円でも売れないというケースはざらにあります。
※週刊ポスト2011年2月4日号