年末年始を観光地や温泉のホテルや旅館でゆっくり過ごした方は少なくないだろう。そんな安らぎの場となる宿泊施設も、実は部屋の構造やトイレ、さらには「朝ご飯」まで規制されているのだ。政策コンサルティングを行う政策工房社長の原英史が解説する。
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朝食付きが定番のビジネスホテルは、一応小さな食堂や喫茶店を備えている。客にすれば、都市部なら近くにレストランもコンビニもあるが、食堂なしでその分料金を安く、とはいかない。
これも規制の結果だ。「旅館業法施行令」では、ホテルや旅館に必要な構造設備について、都道府県の条例で基準追加できることにしている。例えば東京都では、「東京都旅館業法施行条例」によりホテルには食堂が必要と定めている。
また、地方によっては、食堂義務付け条例がないが、それでもホテルが食堂を設けるケースがある。
その理由は「ラブホテル扱いされないため」である。
どういうことか。
「ラブホテル」にあたるとなると、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(以下「風営法」)によって警察の監督下におかれ、18歳未満は立ち入り禁止など厳格な規制に縛られる。しかし、「風営法施行令」では、食堂とロビーが一定面積以上確保されていれば、ラブホテルとはみなされなかった。
だから、ビジネスホテルが「ラブホではない」ことを証明するために食堂を設ける。何だか本末転倒ではないか?
しかも逆に、ラブホテル業者の側から見れば、規制をかいくぐるのは簡単だ。食堂やロビーらしきものを作っておけばよい。当然の帰結として、法令上はビジネスホテルとして営業する「偽装ラブホテル」が増殖し、問題になった。
警察庁は2010年7月、施行令を改正し、食堂とロビーがあっても、「休憩料金表示」「自動精算機」などがある場合を規制対象に加えた(2011年1月から施行)。しかし、新たな規制に対しても業者は網をすり抜けようとする。イタチごっこが続くことになりそうだ。
※SAPIO2011年1月26日号