かつて世界を席巻した「日の丸ブランド」はなぜ力を失ったのか。その復活はあるのか。その問題点と可能性を大前研一氏が解説する。
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1990年代半ば以降、多くの分野で世界市場から日本製品が目に見えて減ってきた。先行指標はアメリカだ。ウォルマート、ターゲット、ラジオシャック、ベストバイなどの巨大量販店で1995年頃からAV機器は日本のブランドが減り、サムスン電子やLG電子の韓国勢と、チャイワン(CHINA+TAIWAN/提携・協力関係にある中国・台湾企業)勢が製造したプライベートブランドやストアブランドに取って代わられた。
一方では、韓国企業が20年前の日本の国別対応戦略をそのまま実践している。たとえばサムスン電子の携帯電話は、現地にいるマーケティング・マネジャーの意見を反映しながら日本製品から不要な機能を削っていく。そうすると機能は必要十分で価格は半分ぐらいになる。
LG電子は白物家電で、さらにきめ細かくマーケット別に対応している。インドでは「絹製品のサリーが洗える洗濯機」や「施錠できる冷蔵庫」(食品泥棒が多いため)、中近東ではスイッチを押すとコーランが流れる「コーラン内蔵テレビ」、韓国ではキムチのにおいが拡散しない「キムチ収納庫付き冷蔵庫」など、実に芸が細かい。
要するに、韓国勢はR&D(研究・開発)にはカネをかけず、日本の技術を模倣し、その代わり国別のマーケティングに力を入れて、現地ニーズに忠実な製品を低価格、かつ日本勢より速いスピードでマーケットに投入している。この戦略が世界中で成功し、今やブランド力も日本勢と全く遜色がなくなっているわけだ。
※週刊ポスト2011年2月4日号