国際金融コンサルタント、経済評論家として、その道では広く知られた菅下清廣氏が、日本が陥っているデフレからの脱却の処方箋を解説する。
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今すぐに政府がやらなければならないデフレ退治の方策は3つあります。
第1には大規模な量的緩和。これをいうと「本当に効果があるのか」という疑問をすぐに受けます。確かに現在も量的緩和をしていますが、資金は市場に出て行かずに銀行の金庫に眠ってしまっている。これ以上の緩和をしても効果はないという見方です。だからこの策だけでは駄目なのですが、なにしろ資金需要が起きた時にお金がなければ意味がないので、量的緩和は継続して、やっておかなければならないのです。
第2に、これも今の風潮では反対論が多いのですが、大規模な公共投資をやるべきです。民間に「さあ、お金を使いなさい」といってもなかなか効果は上がりません。ならば、まずは景気の呼び水として公共投資をすることは悪ではない。しかもそれは、新しい産業を育てるようなものをやればいいのです。私は、電気自動車などのエコおよび環境分野と、太陽光発電、地熱、海洋資源の開発・研究などニューエネルギー分野に集中投資すべきだと考えています。
そして3番目が円安政策です。これは多くの場合、輸出産業を支援する策として検討されますが、そうではなく、円安によって輸入価格を引き上げ、今のマイナスから適正なレベルの物価高に誘導するためにやる必要があるのです。もちろん、生鮮食料品や生活必需品の価格上昇には配慮しなければなりません。
この3つの政策をセットでやれば、デフレは止められます。ところが、菅内閣というのは「デフレ大好きグループ」が牛耳っている。この人たちの特徴は、社会保障の充実、財政再建、そして増税です。まさに菅政権の政策そのものです。社会保障も財政再建も大切なことですが、増税によっては成功しません。経済成長、好況到来によって達成されるのです。増税すれば、民が苦しみ、日本経済が衰退するのみです。
※週刊ポスト2011年2月4日号