かつてNHKで働いたこともあるジャーナリスト・上杉隆氏は、NHK会長人事をめぐる騒動をうけて、こう書いている。
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アナログ停波の期限となる今年、いよいよ「当初の予定通りの地デジ完全移行は難しい」との声が大きくなってきた。それでもNHKは、「延期は想定していない。完全移行に向けてまっすぐ進む以外の選択肢はない」といい張る(1月6日、NHK大阪放送局の堂元光局長会見)。本来ならば、『電波利権』の著者で元NHK職員の池田信夫氏や私が、問題点を指摘した時点で、地デジ政策の破綻を認めるべきだったのではないか。それはNHKの内部にいた者だったら、誰もが気づいていたはずだ。
だからこそ、新会長には、こうした内部の声をすくい上げるような人材が不可欠だったのではないか。地デジ見直しを含めたNHK改革のためには、新会長は「一視聴者」ではなく、NHKと政治の関係も含め「内部をよく知る人物」でなければならない。
そこで私がNHK会長に推薦したいのは、他ならぬ元NHKの池上彰氏である。報道局出身で内情にも詳しく、かつ政治と癒着しない姿勢を示している彼には、加えて世論の後押しを力に改革を進められるという期待もある。前出の池田信夫氏もNHK出身で適任だが、反NHK色があるので内部の抵抗が強いかもしれない。
これは、決して冗談ではない。池上氏ほどの人物でなければ、いまのNHKを立て直すことは難しいのだ。
地デジ推進派のある族議員は、取材していた05年頃、ひそかに「地デジは景気対策用の公共事業」と断言し、こう続けた。
「2011年7月時点の大臣が、責任取って辞任するしかないんじゃないかな」
それでもNHKは政治と癒着して放送利権の温存に必死になっている。その事実すら知らない人物が会長になった今回のNHK 会長人事は極めて残念だ。
※週刊ポスト2011年2月4日号