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中国ステルス機「殲20」の運動性は侮れなくなる可能性も

 ついに海だけでなく空でも軍事的優位を確保しようと動き出した中国の人民解放軍。特にステルス戦闘機の開発は大きな話題となった。中国のステルス戦闘機の能力とはどの程度なのか、軍事ジャーナリスト、井上和彦氏が分析する。

 * * *
 1月11日、中国四川省成都で、中国の第5世代ステルス戦闘機「殲20」(J20)が試験飛行に成功した。

 このニュースは世界中を駆け巡り、とりわけ、旧式化したF4戦闘機の後継機として、本命の第5世代戦闘機「F35」を取得すべく選定作業中の航空自衛隊を直撃し、筆舌に尽くしがたい衝撃を与えた。

 というのも、中国は、国産の第4世代戦闘機「殲10」(J10)を実戦配備して世界の注目を集めたばかりで、「殲20」の登場はあまりにも突然だったからである。

 今回、「殲20」に関する報道は、「F22にそっくり」というものが多かったが、似ているのは機首部だけであり、主翼、カナード(先尾翼)、垂直尾翼、エンジンなど各部は大きく異なっている。

 周知の通り、「F22」は米空軍が世界に先駆けて制式化した第5世代ステルス戦闘機である。レーダーに探知されにくいステルス性に加え、スーパークルーズ(超音速巡航)や短距離離発着も可能な、世界最強の戦闘機である。「殲20」の開発には、「F22」の存在が大きな影響を与えていることは言うまでもない。

 機体は「F22」よりも若干大きく、操縦席と極端に小さな垂直尾翼との距離が妙に長い。後部から写された写真を見る限り、エンジンはこれまでの標準的なジェットエンジンと同じである。「F22」では、排気口からの噴流の向きを変える推力偏向ノズルが採用され、これにより「F15」を上回る運動性能(「F15」相手の模擬戦闘で100戦無敗の逸話も)を持つが、「殲20」では採用されていないようだ。

 だが、とりわけ小さな垂直尾翼が気になる。垂直尾翼の大きさは、航空機の運動性に影響するのだが、「殲20」の垂直尾翼は、尾翼全体が動く仕組みの「オールフライングテール」となっており、これによって高い運動性を確保しているものと思われる。

 もとよりこの仕組みは水平尾翼に採用されていたもので、垂直尾翼に採用した例を筆者はこれまで耳にしたことがない。オールフライングテールは、瞬時に航空機の飛行姿勢を変えることもできることから、もしこれが実現できているとすれば、「殲20」の運動性は侮れないことになろう。

※SAPIO2011年2月9日・16日号


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