セコム創業者で取締役最高顧問の飯田亮氏は、日本に初めてセキュリティ事業を導入して、さらにその事業対象は、警備から防災、医療、介護、情報まで拡大し続けている。新規事業を次々と生み出してきた飯田氏は、“日本発ビジョナリー・リーダー”の代表格とされる。氏に、今の日本をどう見ているか聞いた。
* * *
――今はビジョンがないまま、日本社会全体が疲弊しているように見えます。特に最近の若者たちは、仕事や出世、私生活での「欲」もなく、新しいことに挑戦しようとしない「草食系男子」が増えていると言われています。一方で、企業は急速にグローバル化しているのに、若者は海外へ出たがらないなど採用面でミスマッチが生じている。
飯田:「草食系」? 嫌な言葉だね。メディアも含めて世間が「今どきの男は……」と言い過ぎだよ。そんなおかしな言葉は使わないほうがいい。企業も「最近の社員は海外に出たがらない」なんて言う前に、無理やり海外でも地方でもどんどん出せばいい。
だいたい、無駄な情報が多すぎるんだ。あまりいろいろなことを知っちゃったら、俺のやっていることはつまらないのでは、と思ってしまう。それよりも、訳もわからずジャングルに入ってみたら、ジャングルの面白さがわかるかもしれないじゃないか。第2次世界大戦時に編成された米軍日系人部隊・米陸軍442連隊の合言葉である“Go for Broke.”(当たって砕けろ)の精神だよ。
――しかし「当たって砕けろ」を実践するには、やはり「自分は何をやるべきなのか」というビジョンが必要では?
飯田:そう。大人はよく若い人をつかまえて「世間はそんなに甘くない。正しいことをやっても通らない。損するだけ」なんて小賢しいことを言うけど「正しいことは通る」「正しいことを貫け」となぜ言わないのか。とにかく若者に先入観を植え付けてはいけない。
■聞き手/長田貴仁(経営学者・ジャーナリスト)
※SAPIO2011年2月9・16日号