中国人が日本の山林や水源を買おうとしていると話題になっているが、彼らはなぜそこにこだわるのか。評論家、宮崎正弘氏が解説する。
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どんな農作物にも必要な「水資源」をめぐる争奪戦も、ヒートアップしている。2025年には、世界の水消費量は現在より25%以上増えて5兆トンに及ぶと見られており、実にその7割が「農業用」に用いられる。
中国では、この30年間で4億数千万人が都市に移動し、現在、都市人口は6億人を超える。しかし、中国の都市には水がない。北京では1000メートル掘らないと地下水が出ないほどだ。特に北部では水の確保が急務のため、長江と黄河を結ぶ大運河を3本建設中(「南水北調」プロジェクト)だが、その水さえも、汚染がひどい状況だ。
そのため、高品質な水を確保することがビジネスチャンスにつながると考えた中国資本が、他国で水源となる森林買収を進めている。報道されたように、日本では北海道の森林などが買われている。彼らは現地で水を瓶詰めしミネラルウォーターとして商品化するかもしれない。
食料自給率が低い日本にとっては、すぐ隣にこうした巨大な胃袋がそびえているということは、大きな危機である。
地球全体で見ても、今後新興国を中心に人口は急速に増え続け、2030年には、地球が養える最大人口と言われる80億人を突破するという予測がある。強まる一方の経済力と人口爆発を背景に、中国が食糧を食い荒らせば、世界的な飢餓の引き金を引くことにつながりかねないのだ。
日本としてはまず、水資源を守るために、外国人による土地取得を規制することが必要だろう。豊富な水産資源を持つ東シナ海やオホーツク海で自由な漁業をするためにも、尖閣諸島など国境の島々を守らなければならない。世界的な食糧争奪レースの中で、どのように食卓を守っていくのか、真剣に考えるべき時が来ているのだ。
※SAPIO2011年2月9日・16日号