黒のタイトドレスに真っ赤なマニキュアという、妖艶な色気をまとって授賞式に現われたのは第144回芥川賞を受賞した朝吹真理子氏(26)。
受賞について「うれしさと畏怖との両方がない交ぜになっている状態」と冷静に話し、受賞の連絡を受けた際には「新聞社から依頼の書評を書いていました」と笑いを取る余裕も見せた。
受賞作品の小説『きことわ』は葉山の別荘を舞台に25年ぶりに再会した貴子と永遠子が夏休みを一緒に過ごした際の現在と過去、夢の中が交錯した時間の風景を描き出している。
朝吹氏と交流がある詩人の吉増剛造氏(71)は「両親などから受け継いだ才覚に加え、詩魂を持ち備えている。将来、日本文学を世界文学の方向に切り開く力を持つ人物です」という。26歳での受賞はもちろん、驚かされるのが朝吹氏の家系から著名人が出るわ出るわ。
才女の父は詩人でフランス文学者の朝吹亮二氏。さらに大叔母は『悲しみよこんにちは』などで知られる翻訳家の故・朝吹登水子氏、親族にはノーベル化学賞の野依良治氏も。
“華麗なる文学一族”の仲間入りをした彼女は、今後も親族たちに負けない作品を生み出せるか。
※週刊ポスト2011年2月4日号