世界最強の軍事大国が、「カード」を切る日が近づいてきているのか。「アメリカは今年中にも戦争を始めるのではないか」――こうした言説が、各国のメディアや研究機関から続々と発せられ始めている。
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オバマ政権にとって戦争で何より大きな障害になるのは、戦死者の増加による世論の反発。それゆえ、外務省の元アジア大洋州局北東アジア課課長補佐の原田武夫氏は新たな戦争は「無人」がキーワードになるという。
「米国の戦争に必要なのは、人的な犠牲ではなく、武器が消費され、軍需産業が儲かること。求められるのは“金はかかるが、自国民の死なない戦争”。そのために無人偵察機や無人戦闘機、ミサイル防衛システムなどの導入に躍起になっているわけです」
無人化や防衛システムの導入には莫大な金がかかる。しかし、だからこそ米国の経済は立ち直り、“軍産複合体”も潤うのである。
加えて原田氏は、軍産複合体が狙う新たな戦争に、「内戦」を挙げる。
「現在、世界では軍需産業が潤う新たなビジネスとして、国内のデモや内戦を鎮圧する“ホームランド・セキュリティ”の分野が注目されています。実は昨年2月、アメリカ欧州軍の呼びかけによって、ドイツのハイデルベルクで、ホームランド・セキュリティの大規模な国際会議が開かれています。そこには、在欧アメリカ軍とともに、ヨーロッパ各国の軍事関係者や情報機関関係者が多数参加していました。
経済危機に陥ったギリシャで大規模なデモが起こったのはその3か月後のことです。出動した鎮圧部隊が使った催涙弾の大半はイスラエル製でした」
デモ鎮圧においては、多数の人員が出動し、高額な“武器”が消費される。米国にはホームランド・セキュリティに関するコンサルティング会社も多数存在する。
「私は、ギリシャのデモは必ずしも偶発的ではなく、インテリジェンス機関によって仕掛けられた可能性もあると見ています。今後はデフォルト(債務不履行)直前ともいわれるカリフォルニア州や麻薬汚染や治安悪化が指摘されているメキシコ国境付近など、米国内でも“恣意的な内戦”が起こされる可能性は十分にあります」(前出・原田氏)
原田氏によれば、米国軍産複合体は日本国内のデモや内戦をもターゲットにしているという。危機はそこまで迫っているのか。
※週刊ポスト2011年2月4日号