「平成の開国」を訴える菅直人首相。彼の意気込みの背景には大いなる勘違いがある、とジャーナリスト・須田慎一郎氏が指摘する。
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菅直人首相に近い民主党有力国会議員がホッとした面持ちでこう言う。
「新内閣に対する支持率は、おおむね30%前後といったところ。微増というレベルだ。まぁ、減少しなかっただけでも良しとしなければ……」
このコメントからも明らかなように、菅第2次改造内閣はまさに“危険水域”からのスタートとなった。そしてこの新内閣が国民から支持を得られなかった要因の一つに、与謝野馨氏を経済財政担当相に起用したことが挙げられよう。これまで民主党を散々批判してきた与謝野氏の起用には野党のみならず、民主党内からも批判の声が上がっている。菅首相は多くのマスコミが指摘するような野党とのパイプ役を与謝野氏に期待したわけではない。
与謝野氏の起用は、明らかな消費税シフトだ。前出の民主党有力国会議員はこう言う。
「実質的には“消費税担当相”という役回り。今通常国会で、消費税に関する答弁には与謝野氏が前面に出ることになる」。そして与謝野氏のバックに、財務省が控えていることは明々白々だ。官邸中枢スタッフの証言だ。
「そもそも総理に与謝野氏の起用を進言したのは、財務省の勝栄二郎事務次官です。財務省は、消費税問題に関して今国会が大きなヤマ場となると見ている。だからこそ与謝野氏を押し込んだのです」
菅首相は、今年6月までに消費税を含む税制の抜本改革の方向性を示すことを明言している。このことはもはや菅政権の“公約”と化していると言っていい。前出の官邸中枢スタッフが続ける。
「総理は、こうした税財政改革とTPPへの参加を進めることを『平成の開国』と位置付け、自らを幕末の英雄になぞらえている。内閣発足時に『奇兵隊内閣』と言ってみせたのは周知の通りですが、加えてタッグを組む勝次官が勝海舟の子孫だと思い込んでおり、前のめりぶりは一層激しくなっているのです」
ちなみに勝次官と勝海舟とは何の縁もゆかりもなく、まったくの赤の他人だ。両者につながりがあることを指摘するマスコミもあるが、誤報である。勘違いしたまま、消費税増税を目論む財務省の言いなりになるのなら、財務省は願ったり叶ったりだろう。
※SAPIO2011年2月9・16日号