就職活動シーズンに突入し、街でリクルートスーツの学生を目にするようになってきた。「新氷河期」なのだから、さぞ学生たちは真剣なのだろう、と思いきや、ある大手メーカーの人事担当者はこんな嘆きを口にする。大学ジャーナリスト・石渡嶺司氏がレポートする。
* * *
「ロビーで着替える学生がいましてね…」
なんと午前中に別の企業の「私服可」の説明会に出席した学生が、その足でこの大手メーカーの選考にやってきて、ロビーでスーツに着替えていたというのである。
企業側がその姿を見てどう受け止めるか、なんて発想はない。自分の都合が第一。
「着替え」のみならず、「エントリーシートを企業のロビーに座り込んで書く」「証明写真を履歴書に貼っていなくて、受付嬢に『ノリを貸してください』と臆面もなく申し出る」といった話は枚挙に暇がない。
「『他の来客の迷惑になりますので、ロビーでの着替えやエントリーシートの記入は御遠慮ください』と張り紙を出そうか検討しましたが、そんな張り紙、他の訪問者が見たら異様ですし…」
冒頭の人事担当者の悩みは深い。企業によっては、注意してもムダ、と悟ってエントリーシート記入のための部屋をわざわざ用意しているところもあるというのである。
※SAPIO2011年2月9日・16日号