「平成の開国だ」とTPP参加方針を打ち出した菅直人首相は、農業団体や族議員から「日本の農業が滅びる」と猛反発を浴びると、慌てて「農業再生」を唱え始めた。1月21日には自身が議長を務める「食と農林漁業の再生実現会議」で、「農地を村全体で所有し、使いたい人が使えることにしたらどうか」と農地制度の見直しを提案。土地公有による農村の組織化といえば、旧ソ連の集団農場「コルホーズ」や中国の「人民公社」の発想だ。
そのアイデアによほど自信があるのだろう。24日の施政方針演説では、「貿易を自由化したら農業は危うい、そんな声があります。私は、そのような二者択一の発想は採りません。過去20年で国内の農業生産は2割減少し、若者の農業離れが進みました」と、農業の危機を強調した上で、「農地集約で大規模化する。こうした取り組みを広げれば、若い人たちが参加する農業、豊かな農村生活が可能なのです」――そう“バラ色の農村”の夢を振りまいたのである。
※週刊ポスト2011年2月11日号