国際情報

リチウムめぐり 日本の技術力VS中国のカネと集金力

 次世代の自動車の本命と目される電気自動車。その鍵を握るのがバッテリーのリチウムイオン2次電池だ。ノンフィクション作家の河添恵子氏が、開発競争とともに激しさを増している原材料のリチウムの資源争奪戦の現状をレポートする。

 * * *
 世界の市場規模は現状、1兆5000億円前後だが、「10年後には5兆円規模に拡大する」と試算されるリチウムは、埋蔵量ベースで世界の約半分(約540万トン)がボリビア(南端のウユニ塩原)に偏在し、次がチリ(北部のアタカマ塩原)、そして中国(約10%)とされる。中国は今後、この分野で2000億円の投資を見込んでいる。
 
 資源確保のリスク分散を図る日本、韓国、フランス、そして中国のリチウム争奪の主戦場がボリビアとなり、中国政府はモラレス大統領の故郷に小学校を建設したり、装甲車や軍用船、軍用自動車を贈るなどの“常套手段”に出ている。
 
 また、鉄、銅、コバルト、金などの他、天然ガスも豊富でリチウムも大量にあるアフガニスタンでも、銅鉱山の開発権を巡り、2009年当時の鉱山相が、中国から3000万ドルの賄賂を受け取ったことも発覚した。
 
 こういったことから中国によるリチウム資源の囲い込み、独占の可能性を示唆する声も出ている。しかし、それは杞憂なのかもしれない。
 
 電池業界関係者は言う。
 
「リチウムはアルカリ金属に属するレアメタルで、海水中に豊富にあります。海水リチウムを抽出するプラントは、日本を中心にすでに稼働しています」
 
 陸上にあるリチウムを採掘するのに比べ、4~5倍のコストがかかるとされるが、それもリチウムを大量に生産・消費する時代になれば、より低コストでの採掘が可能になると言われている。
 
 経済産業省の関連部門担当者はこう語る。
 
「リチウムイオン2次電池が万能の神なのかは未知数。10年以上、研究が続いている金属空気電池や全固体電池など、新しい電池で実現する可能性も捨てきれません」
 
 果たして日本の技術力が勝利するのか、中国のカネと集金力が世界を制覇するのか? 資源と新エネルギー開発の戦争は、口火を切ったばかりだ。

※SAPIO2011年2月9日・16日号

関連キーワード

トピックス

山口組分裂抗争が終結に向けて大きく動いた。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
「うっすら笑みを浮かべる司忍組長」山口組分裂抗争“終結宣言”の前に…六代目山口組が機関紙「創立110周年」をお祝いで大幅リニューアル「歴代組長をカラー写真に」「金ピカ装丁」の“狙い”
NEWSポストセブン
「衆参W(ダブル)選挙」後の政局を予測(石破茂・首相/時事通信フォト)
【政界再編シミュレーション】今夏衆参ダブル選挙なら「自公参院過半数割れ、衆院は190~200議席」 石破首相は退陣で、自民は「連立相手を選ぶための総裁選」へ
週刊ポスト
Tarou「中学校行かない宣言」に関する親の思いとは(本人Xより)
《小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」》両親が明かす“子育ての方針”「配信やゲームで得られる失敗経験が重要」稼いだお金は「個人会社で運営」
NEWSポストセブン
中居正広氏と報告書に記載のあったホテルの「間取り」
中居正広氏と「タレントU」が女性アナらと4人で過ごした“38万円スイートルーム”は「男女2人きりになりやすいチョイス」
NEWSポストセブン
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波も(マツコ・デラックス/時事通信フォト)
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波、バカリズム脚本ドラマ『ホットスポット』配信&DVDへの影響はあるのか 日本テレビは「様々なご意見を頂戴しています」と回答
週刊ポスト
大谷翔平が新型バットを握る日はあるのか(Getty Images)
「MLBを破壊する」新型“魚雷バット”で最も恩恵を受けるのは中距離バッター 大谷翔平は“超長尺バット”で独自路線を貫くかどうかの分かれ道
週刊ポスト
もし石破政権が「衆参W(ダブル)選挙」に打って出たら…(時事通信フォト)
永田町で囁かれる7月の「衆参ダブル選挙」 参院選詳細シミュレーションでは自公惨敗で参院過半数割れの可能性、国民民主大躍進で与野党逆転へ
週刊ポスト
約6年ぶりに開催された宮中晩餐会に参加された愛子さま(時事通信)
《ティアラ着用せず》愛子さま、初めての宮中晩餐会を海外一部メディアが「物足りない初舞台」と指摘した理由
NEWSポストセブン
「フォートナイト」世界大会出場を目指すYouTuber・Tarou(本人Xより)
小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」に批判の声も…筑駒→東大出身の父親が考える「息子の将来設計」
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《妊娠中の真美子さんがスイートルーム室内で観戦》大谷翔平、特別な日に「奇跡のサヨナラHR」で感情爆発 妻のために用意していた「特別契約」の内容
NEWSポストセブン
沖縄・旭琉會の挨拶を受けた司忍組長
《雨に濡れた司忍組長》極秘外交に臨む六代目山口組 沖縄・旭琉會との会談で見せていた笑顔 分裂抗争は“風雲急を告げる”事態に
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 中居トラブル被害女性がフジに悲痛告白ほか
「週刊ポスト」本日発売! 中居トラブル被害女性がフジに悲痛告白ほか
NEWSポストセブン