デフレ不況、モノが売れない時代でも、めちゃくちゃ売りまくるビジネスエリートはいる。各界の「ナンバーワン営業マン」を取材してみると「モノ売る人々」の法則が見えた。
その中の一人、世界で認められた生保マン――KJパートナーズ代表取締役の小林廣久氏(52)のことである。小林氏は世界82か国、約3万人の生保、金融の専門職から成るMDRT(Million Dollar Round Table)で終身会員の栄誉に浴する。各国プロが舌を巻く成功メソッドを紹介したい。
●内容よりコンセプト
生保や損保の保険商品の法人営業を手掛ける小林氏は、過去340社の顧客を持ったという。卓越した営業力の中でもとりわけ評価が高いのがプレゼン力である。
「商談では契約内容を細かく説明しても意味がない。『この商品を買うと結果としてこうなる』といったゴールをイメージさせることが必要です。例えば、『この商品ならがんになっても治療に専念でき、トップクラスの医師も紹介します』と。自分の人脈を活かしながら、お金が支払われる際の状況を説明する」
これは“コンセプト話法”と呼ばれ、小林氏がアメリカで学んできたものだ。
「実は定評あるジャパネットたかたのCMもそう。電子書籍を売るときに『4メートル分の本棚スペースがこの1台に!』と商品の細かいスペック説明をしていない」
●5分で3つの説明をする
年間250件の商品を締結する小林氏は、お得意様との交渉だけがメインではない。ぞんざいに扱われがちな飛び込み営業もこなす。そこで小林氏が用いるのが“時間話法”だ。
「『5分だけでいいから話を聞いてください』とお願いして、机の上に時計をだす。そして本当に5分経てば帰る。ここで重要なのは、『今から3つの話をします』と約束すること。お客様は3つまでなら、終わるまで我慢してくれます」
そこで説明するのが商品の・価格・メリット・デメリットだ。もちろん5分間で契約が結べるなどあり得ない。無理しないで“信用”を得ることだけを意識すればよい、と小林氏は考える。
※週刊ポスト2011年2月11日号