世界的ファッションデザイナー・森英恵さん(85)の自伝『グッドバイ バタフライ』(文藝春秋、1890円)には、仏・パリのオートクチュール界から身を引いて6年半となる彼女の、数々の人生ドラマが綴られている。
大正15年、島根県六日市村(現・吉賀町)で、開業医の第4子として生まれた。ふたりの兄、姉、妹の5人きょうだいは、まだ着物を着ている子供がいる時代に、父親がデザインしてあつらえたそろいの洋服で学校に通った。
森さんの父親は粋でダンディーなジェントルマンで彼女のデザインを生み出す感性や美意識は、父親の影響を受けたのかもしれない。
しかし、彼女は、もともとデザイナーを志していたわけではなかった。森さんが語る。
「結婚したら専業主婦はもの足りないし、気に入る洋服がなかなか見つからなかったことで、家族や自分の服を自分で縫えるようになりたいと思って洋裁学校に通い始めたんです。それがとてもおもしろくてね。途中で長男を妊娠して、大きなお腹を抱えて大変でしたけど」
いまや世界的なデザイナーになった森さんだが、もともとは志望していなかったのだ。
※女性セブン2011年2月10日号