「農薬は怖い。使わずに栽培したほうが安全に決まっている」という農薬についての思い込みは、大きな勘違いであると、東京大学・農学生命科学研究科教授の眞鍋昇さんはいう。
「農薬は恐ろしい毒薬…というのは、40年以上前の時代のこと。確かに当時は、農作物の病気や害虫駆除効果のみを重視し、安全性の検証がおろそかだったため、農薬を散布する農家の人たちに健康被害が出ました。それを受けて1970年ごろから、米国の環境保護庁が中心となり、特に発がん性、催奇形性について検証。日本でも1971年に農薬取締法が改正になり、多くの農薬の製造・販売・使用が中止されました」
その結果、農薬は農林水産省によって、製造販売が厳しく規制されることになった。
「現在は、ひとつの農薬について約100億円もの費用をかけ、あらゆる安全性が徹底的に確認されるシステムになっており、安易に農薬が認可されることはありません。いま、日本で認可されている農薬で、人体に危険なものはあり得ないのです」(眞鍋さん)
一方で、気になるこんな指摘もある。
「一般の農作物は、このような厳しい認可制の農薬によって安全が確保されているといえますが、『認可・登録されている農薬を使わない』有機や無農薬栽培の野菜は、裏を返せば、認可されていない、つまり安全性が確認されていない化合物を使っている可能性もある。
実際、農作物の栽培は、雑草、害虫、病気との壮絶な闘いですから、それらの駆除剤をまったく使わず、ある程度の量を生産することは難しい。そんな意味でも、有機や無農薬栽培のものがすべて、安全であるとはいい切れないのです」(眞鍋さん)
※女性セブン2011年2月10日号