デフレ不況、モノが売れない時代でも、めちゃくちゃ売りまくるビジネスエリートはいる。各界の「ナンバーワン営業マン」を取材してみると「モノ売る人々」の法則が見えた。
一口に営業マンといってもその対象は個人、法人など様々だ。当然、商談相手に伴い、その苦労も異なる。
大和ハウス工業・柏支店流山集合住宅営業所主任の宮崎裕介氏(33。崎は正しくは「つくりの上部が立」)は、地権者や地主を顧客に持ち、彼らの土地にアパートやマンションを開発している。
昨年は25棟の賃貸アパート・マンションを開発。全国1位の契約を成立させた。
●地味なスーツを着る
宮崎氏はマンション開発事業についてこう説明する。
「飛び込み営業から始まり、関係を築きつつ、『なぜ、賃貸住宅が必要なのか』『どのような節税効果が見込めるのか』を訴えかけていく。地道な交渉の連続ですよ」
対象となる地主は70歳以上の年配者が多いゆえ工夫も必要――宮崎氏は緻密な戦略の下、セルフプロデュースを行なっている。
「お客様に警戒心を抱かせないため派手な身なりをしない。長期的な営業ですから第一印象のインパクトはいりません。地元に溶け込む意味を込めて、農協が販売するスーツ、時には作業用ジャンパーを着て、長靴も履いています」
●顧客親族の命日に電話
宮崎氏の手帳には顧客の職業、家族構成はもちろん、誕生日や親族の命日まで書き込まれてでいるという。
「何となく、お客様の家にいって、話すという無駄な訪問はしないようにしています。その代わり、誕生日や命日の際に電話しています。特に命日は家族にも、蔑ろにされたり、忘れられたりしていますから」
あなたのために働いているんです――。その姿勢を常に見せられるかどうかが交渉の成否を決めるのだ。
※週刊ポスト2011年2月11日