「草食系」と呼ばれる若者が急増し、セックスへの関心が薄れてきているといわれる昨今。それは若者だけでなく、バブル期に豪華なホテルやレストランを予約してプレゼント攻勢を重ね、最終的なゴールとしてのセックスを目指した“肉食世代”の40代以上にも実は広がっているのだ。
「もう一生セックスしないでしょう」というのは東京都在住の会社員・和田紀夫さん(41・仮名)だ。コンピューターシステムを設計する会社で課長職を務める和田さんの退社時間はいつも終電間際。自宅のマンションに帰るとシャワーを浴び、妻とは別の寝室にはいる。
「ここ5年間くらいは妻としてません。きっかけは子供ができて、寝室が別になったことですね。子供の夜泣きがひどかったから、ぼくが寝不足にならないよう寝る部屋を分けたんです。子供もできたし、妻とはもう特にする必要ないかなと思っています」
30代ではチャンスがあれば浮気でも、と考えていたが、最近ではそんな夢想もめっきりしなくなった。
「時間もお金もないし、容姿はもう中年。そんな自分の相手をしてくれる都合のいい女性がいるわけがない。仕事で考えなければいけないことがたくさんあるから、それどころじゃないというのもあるし…」
セックスレス夫婦は約4割に達し、あらゆる世代の男性たちが「もうセックスはしたくない」と口にし始めている。
彼らに共通するのは、人とかかわろうとする意欲の衰えだ。人間がセックスを求める意味は、大きく2つある。ひとつは子づくりのためで、もうひとつは安心感や信頼感を得るためだ。
高校教諭として25年間、「性」をテーマにした教育を実践し、現在は京都教育大学准教授を務める関口久志さんは、こう話す。
「セックスの過程で、男女は語り合い、触れ合い、裸になって抱き合いますが、これによりお互いが自分をさらけ出し、相手に心から認められたと感じるようになります。その幸福感が快感につながるんです。
いま男性たちが性欲はあるのにセックスしたくないというのは、自分をさらけ出すのが苦手で人と深くかかわる余裕もなく、おっくうになっている、ということでしょう」
最近は、女性の気持ちを汲み取れない男性が増えてきたと作家の横森理香さんは嘆く。
「男性にとっては面倒くさいかもしれませんが、女性が求めているのは“ずばり”じゃなくて、話を聞いてくれたり、自分のことを理解してくれたりすることなんですよ。昔は男性にそれにも勝るセックス欲があったのに…」
※女性セブン2011年2月17日号