国立社会保障・人口問題研究所によれば、2007年時点で75歳以上の高齢者の割合は全人口の9.9%。これが2030年には19.7%と、実に国民の5人に1人が75歳以上になると推計されている。75歳以上の要介護認定率(要支援を含む)は29.8%で、65~74歳の約6倍だ。要介護者の増加で、介護保険の給付額は急増しており、日本の社会保障制度はパンク寸前である。
深刻な問題を抱えるのは制度そのものだけではない。個々の家庭の介護現場においても、経済的負担が重くのしかかる。日本経済新聞社の調査によれば、在宅介護の1か月間の平均介護費用は、約4万2000円。ほぼ寝たきり状態である要介護度4、5になると、約7万円にもなる。
有料老人ホームなどの介護施設に入所した場合は、介護費用に生活費などを合わせて、1か月で20万円以上になるというデータもある。さらに皮肉なことだが、近年、医療・介護環境が整ってきたことで、介護期間は年々長期化し、費用負担は増している。
「介護貧困」に陥るケースも増えている。厚生労働省によれば、2000年以降の8年間で、「要介護状態」を理由に「生活保護」を受ける高齢者世帯の割合はほぼ倍増した。
介護問題に詳しいケアタウン総合研究所の高室成幸所長が指摘する。「長ければ10~15年間介護を受け続ける人も珍しくない。少なくとも90歳までは生きることを想定して介護資金を準備する必要があります」
ただ、介護のお金を節約するためには、もうひとつ大切なことがある。前出の高室氏がいう。「介護資金に代わるのは、人的なネットワークです。健康で元気な時から、家族や親戚、近隣の人などと、できるだけ良好な関係を構築してほしい。いざという時に助けてもらえる関係があれば、結果的に介護費用を抑えることに繋がります
※週刊ポスト2011年2月18日号