その手で乳房のあらゆるトラブルを解決し、母乳育児に悩む母親の救世主として全国に名が知られる、助産師の武田一子氏(78)。「おっぱい先生」の愛称で慕われ、愛知県にある武田助産院には、月に100名もの母親が初診に訪れる。
「乳房マッサージは“陣痛より痛い”と苦痛だったのに、先生のマッサージは全然痛くない。乳房がカンカンに張っていても、あっという間にプルプルになる」
「乳腺炎で肩から上に腕が上がらないほど乳房が張って、どこへ行っても解消できなかったのに、ここへ来たらたった1回で腕が上がるようになりました」
多くの母親たちがはるばる訪れるのも、実際に施術を目の当たりにすれば納得できる。鬱血して岩のように固くなった乳房に武田氏が触れると、ものの数分で母乳がピューッと噴水のように吹き出してくるのだ。勢いがよすぎて天井へ届くこともある。乳房に血がめぐり、やわらかくなっていくのが見ていてもわかる。
その間、母親たちの表情は穏やかで、一般に激痛を伴うとされる乳房マッサージでも、武田氏の施術はほとんど痛みを感じないのだという。
「一般のマッサージが痛いのは、固くなった乳房をぐりぐりと触り、乳腺体を揉みほぐすから。マッサージで乳腺炎を引き起こすことすらあるのです。私が継承した桶谷式乳房手技では、乳腺体を刺激するような無謀な触れ方はいたしません。それが、桶谷式ケアの極意なのです」
と、武田氏は胸を張る。
「母乳育児を望む母親の約半数が、悩みを抱えています。その多くは母乳が出ないこと。赤ちゃんが吸い付かない、乳房が固く張って痛いなどのトラブルがある人は基底部が固くて、ゆるみがなくなっているため。癒着しておっぱいが圧迫されているのです。桶谷式には基本手技が7つあり、あらゆる乳房トラブルの原因となる基底部を確実にとらえて、癒着を剥がします。1回15分程度。症状ごとに施術の回数に差はありますが、なかには1回で解消される症状もあります」
素人が真似をすると乳房を傷つけることにもなりかねないので桶谷式の詳細を紹介はできないが、基本的には基底部のみにマッサージを施し、乳管開通のために乳頭に触れるのみだ。乳腺体を刺激しないので痛みがなく、乳房の膨らみを形成する「クーパー靭帯」を損傷して形が崩れる心配もないという。
※週刊ポスト2011年2月18日号