大学の数が増え、学生の質の低下が叫ばれているが、これから企業は学生をどういった方針で採用すればいいのか。大前研一氏が提案する。
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大学受験シーズンを迎え、私が受験生にアドバイスをするとしたら、大学は偏差値や知名度ではなく、実務を教えてくれるかどうかで選べ、ということだ。
この国を出ても役に立つ実務、海外で活躍できる職能少なくとも「語学」「IT」「財務」は必須のスキルだし、リーダーシップや世界の政治経済の動きを肌で知ることも重要を徹底的に教えてくれる大学に入らなかったら、4年後の就職活動は地獄だと思う。
なぜなら、現在の就職ミスマッチが改善される見込みはないので、企業はさらに外国人採用を拡大せざるをえなくなり、日本の大学生の就職氷河期は年々厳しくなると思われるからだ。もしかすると、就職率は毎年10%ずつ落ちていくかもしれない。つまり、4年後は40%になっても不思議ではないのである。
この問題の根本的な解決策として私が日本企業に提案したいのは「丁稚奉公」の復活だ。大学新卒者ではなく高校新卒者を採用して4年間預かり、昔の丁稚のようにOJT(On the Job Training/職場内教育)で海外赴任も含めて実務を経験させながら、企業が求めている人材に鍛え上げるのだ。
その間の給料は、親が大学の授業料と思って負担するか、企業が奨学金を出すかたちにすればよいだろう。
そして4年後に丁稚奉公が終わったら、そのまま勤めることも可能だし、他の企業に就職することもできるという契約を結んでおき、どんな仕事を経験したかを証明するトレーニングの「修了証書」を発行する。それがトヨタ自動車やパナソニック、ソニーなど日本を代表する企業のものだったら、世界中の企業が採用してくれるだろう。
その結果、どの企業で丁稚奉公したら最も就職に有利か、という競争が始まる。各企業は、役に立たない大学新卒者を採用するより、高校新卒者を自社が必要としている人材に養成していこう、そこにお金をかけてカリキュラムを充実させよう、と考えるはずだ。
要は、企業が大学の代わりに教育するわけだが、今後も日本の若者を雇用していくとすれば、この方向に採用・教育システムを変えるしか、グローバル化に対応する道はないと思うのである。
※SAPIO2011年2月9日・16日号