1月27日、米格付け会社「スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)」が、日本国債の格付けを引き下げたことについて問われた菅直人首相はこう答えた。
「そういうことには疎いので、改めてにしてください」
当然、翌日からは野党の集中砲火を浴びた。すると、「格付けの持つ意味は、私なりに相当程度、わかっているつもりだ」と釈明に追われる始末だった。
しかし、菅氏は民主党幹事長時代の9年前に、こんな憂国論を披瀝していたのである。米格付け会社「ムーディーズ」が日本国債を2段階格下げした時、自身のHPでこう書いていた。
〈景気回復が見込めず財政悪化に歯止めがかからないと見られた結果。(中略)外国に資金が流出し始めれば一挙に国債は暴落する恐れがある。能天気な総理や財務大臣には分かっているのだろうか〉(2002年5月31日)
「疎い」どころか、時の小泉純一郎・首相や塩川正十郎・財務相を“格付けの意味を知らないアホ”と一刀両断していたのだ。9年の歳月は、そこまで菅氏の脳を衰えさせたのだろうか。民主党の古参職員はこんな内情を明かす。
「野党時代、菅さんは政府追及のためにあらゆる問題にかみつきまくっていたが、批判の材料探しや論理はすべて秘書や党の政調スタッフに任せきり。特に財政と外交については、全く理解していなかった」
政治家は言葉に責任を持つべき――とは、これまた過去に菅氏が繰り返してきたフレーズである。「疎い」発言は、菅氏の政治家としての格付けを大きく引き下げたことは間違いない。
※週刊ポスト2011年2月18日号