厚労省の統計によると、結婚した人が離婚する確率は実に30%になるのだという。「結婚に失敗した」と自己嫌悪に陥り、後ろめたさと申し訳ない気持ちで、小さくなったのも今は昔、「離婚式」を挙げて親戚や友人に広く報告する人たちが出てきた。年間50万人が離婚する時代、別れのカタチはここまで変わってきている。
「このたびは、円満離婚おめでとうございます。え~、まぁ、離婚というのも悪いものではありません。私も離婚経験者ですが……」――そんな友人代表の挨拶を、苦笑いしながら聞く“旧郎”と“旧婦”。会食中には、スクリーンに二人の出会いから別れまでの思い出のシーンが、スライドショーとして映し出され、集まった両親や親戚、友人たちからため息が漏れる……。
これは最近注目を浴びている、結婚式ならぬ「離婚式」のひと幕だ。別れのイベントをプロデュースする日本初の離婚式プランナー・寺井広樹氏が企画する離婚式は、基本料金が5万5000円。仲人ならぬ“裂人”が立ち会い、参列者は御祝儀ならぬ“御終儀”を持参する。
「離婚式を始めた2009年は6組でしたが、昨年は53組に。今年はそれを上回るペースで予約が入っています。最初は人の不幸を食い物にしていると批判的に受け止められもしましたが、実際に離婚式に出た方からは『思った以上に感動した』『羨ましい』という声をいただいています」(寺井氏)
なかには「私が離婚することになったら、離婚式をプロデュースしてください」といっていた女性の参列者が、その2か月後に本当に離婚式を行なったこともあったとか。
式は、寺井氏による離婚の経緯説明から始まるが、双方の言い分が食い違いやすい部分だけに、頭を悩ますことが多いという。
「離婚原因として、“旧婦”から『浮気』のフレーズを盛り込むよう要望があることもあります。さすがに参列するご両親の前で浮気とはいえないので、『異性関係のもつれにより』と言葉を濁したり、『人間関係のいざこざにより』とオブラートに包む場合もありますね」
「二人からひと言」のコーナーでは、“旧婦”が参列者を前に、養育費や親権問題、財産分与などについて10分あまりにわたり滔々と語り出すケースも。そして夫婦“最後の共同作業”では、「独身にかえる」の意味を込めて、カエルのついたハンマーで結婚指輪を叩き壊す。
ちなみに会食では結婚披露宴同様、参列者の歌や踊りも披露されるが、トラブルを防止するため、飲み物はノンアルコール限定だ。
実際に離婚式を行なった、ある“旧婦”の話。「夫とは共通の友人が多いので、みんなの前でケジメをつけたいと、離婚式を思い立ちました。彼に『今までありがとう』といわれたときは、涙が出ましたね」
※週刊ポスト2011年2月18日号